キタカミのさと、アップルヒルズ。
オタチは、たくさんのなかまたちと、たのしくすごしていました。
あるひ、アップルヒルズに、はじめてみるポケモンがあそびにきました。
そのポケモンは、あおくて、まるいからだ。しっぽも、まんまるです。
オタチは、「だれだろう?」と、きになりました。
そのポケモンがオタチにちかづいて、こえをかけてきました。
「はじめまして!ぼくはマリル。きみはだあれ?」
「ぼくは、オタチだよ」
「ぼくは、パルデアからきたんだ。おともだちになってくれる?」
パルデアがどこか、オタチはしりませんでした。
でも、マリルとおともだちになりたいとおもいました。
オタチは、リンゴのうかのおじいさんにもらったあまいリンゴを、マリルといっしょにたべました。
ふたりは、すっかりなかよしになりました。
つぎのひ。
マリルがいいました。
「オタチのおなか、まんまるだね。『はらだいこ』がじょうずにできそう!」
「はらだいこ?」
オタチは、はじめてきくことばに、くびをかしげました。
「『はらだいこ』っていうのは、つよくなれるわざなんだ。でも、つかうとつかれちゃうから、トレーナーにはあんまりつかっちゃダメっていわれてるんだ」
マリルには、トレーナーがいるようでした。
「やってみるね!」
マリルは、たちあがって、おなかをポコポコたたきはじめました。
からだがしろくひかって、ちょっとだけおおきくなったみたいです。
「すごい!」
オタチも、やってみたくなって、おなかをたたきました。
ポコーン!
マリルより、いいおとがしました。
でも、からだはひかりません。
「あれ?おかしいなぁ」
オタチは、もういちどやってみました。
いいおとはしますが、なにもかわりません。
「やっぱり、おとがすごくいいね!でも、どうして『はらだいこ』ができないんだろう。トレーナーにきいてみるね。またあしたね!」
マリルは、スイリョクタウンへかえっていきました。
つぎのひ。
マリルは、またアップルヒルズにきてくれました。
「トレーナーにきこうとしたんだけど…ポケモンのことばがわからないみたいで、うまくつたえられなかったの。ごめんね」
きのうよりちょっとすっぱめのリンゴをいっしょにたべながら、マリルはいいました。
「ぼく、きづいたときには『はらだいこ』ができてたから、オタチも、れんしゅうしたらできるようになるかも!」
「うん、れんしゅうしてみる!」
オタチは、マリルとわかれたあと、れんしゅうをはじめました。
ポコーン、ポコーン!
そのおとをきいて、なかまのオタチたちもやってきました。
「なにしてるの?」
「『はらだいこ』のれんしゅうだよ!」
「なにそれ、おもしろそう!」
みんなも、いっしょにおなかをたたきはじめました。
ポコ ポンポンポン
ポコ ポンポンポン
リズムのいいおとが、アップルヒルズにひびきます。
「おやあ、オタチがなにかしてらな〜」
リンゴをとっていたおじいさんが、たのしそうにいいました。
「おじいさん、ぼくたち『はらだいこ』のれんしゅうしてるんだけど、ひからないんだ。どうしてかな?」
でも、おじいさんにはオタチのことばがわかりません。
「ええもん、みさせてもらったすけ。ほれ、これもっていぎ」
おじいさんは、またあまいリンゴをくれました。
そのつぎのひ。
マリルは、またやってきました。
こんどは、わかいにんげんもいっしょです。
「このひと、ぼくのトレーナーなんだ!」
マリルはいいました。
「オタチ、ざんねんだけど…ぼく、もうかえらなきゃいけないんだ」
「えっ、もう!?」
せっかくともだちになったのに。
オタチはさびしくなって、おなかをポコンとたたきました。
「ん?『はらだいこ』?」
トレーナーが、スマホロトムをとりだして、しらべました。
「うーん…オタチは『はらだいこ』をつかうことができないみたいだね」
「「ええーっ!」」
オタチもマリルも、おどろきました。
「こんなにいいおとがするのにね」
マリルは、オタチのおなかをなでながらいいました。
「ごめんね。ゆうがたのバスでかえるから、そのまえにまたくるよ」
マリルは、いったんスイリョクタウンへかえりました。
オタチは、しょんぼりしました。
「マリルとおわかれなんてさびしい…」
「『はらだいこ』も、できないなんて…」
そのとき、なかまのオタチたちがやってきました。
「どうしたの?」
オタチは、いまおこったことをぜんぶはなしました。
「うーん、それはざんねんだね」
「でも、あのリズム、すごくよかったよ」
「おじいさんも、よろこんでたし!」
それをきいたオタチは、ひとつのアイディアをおもいつきました。
「みんな、ちょっとてつだってくれる?」
ゆうがた。
マリルとトレーナーが、またアップルヒルズにきました。
マリルは、ちいさなにもつをもっています。
「オタチ、きょうはおわかれだけど、ぜったいまたくるからね!」
「うん。マリル、ぼく、みせたいものがあるんだ」
そういって、オタチはさかをかけあがりました。
トレーナーとマリルがみあげると、たくさんのオタチがならんでいます。
「マリル、あそんでくれてありがとう。『はらだいこ』はつかえなかったけど、ぼくたちがれんしゅうした『はらだいこ』、きいてください!」
オタチはみんなにあいずをしました。
そして、おなかをたたきはじめました。
ポコ ポンポンポン
ポコ ポンポンポン
ポコ ポンポンポン
ポコ ポンポンポン
ゆうやけのなかで、リズムよくおなかをたたくオタチたち。
マリルは、めをまるくして見ていました。
「すごい……ほんとうの『はらだいこ』だね」
トレーナーがつぶやきました。
「マリル、いいともだちができたんだね。またキタカミにこよう」
「リルっ!」
マリルは、うれしそうにうなずきました。
キタカミのさと、アップルヒルズ。
ここでは、オタチのむれがえんそうする『はらだいこ』がときどききこえるのです。
おしまい